錫ヶ岳山頂
錫ヶ岳
(すずがたけ)
標高2388m
 
白桧岳
(しらびたけ)
標高2394m
片品村と日光市
登山日2011年10月8日
  錫ヶ岳山頂

●無謀にも錫ヶ岳へ

 スズヶ岳というと、赤城山の鈴ヶ岳が、まず思い浮かぶ、私が山歩きを始めて間もないころ、ベテラン登山家が、錫ヶ岳に行きたいという話しをしていた、聞けば、赤城山の鈴ヶ岳ではなく、群馬県と栃木県の県境の山で簡単に行けるような山ではないし、山頂でテント泊で行かれた方もいた、健脚の登山家が、日帰りで行かれた記録も読ませていただいたが、私には到底縁の無い山と思っていた。


 四郎岳に登ったとき、白根山から西に延びる、白錫尾根と錫ヶ岳、これがあの”錫ヶ岳”かと思うと、なんとも感慨深いものがある。


四郎岳から見る、白根山と錫ヶ岳

●このコースなら

 NETで錫ヶ岳を検索すると、幾つか、山行記が出てきた、その中で”ハイトス”さんの行かれたコースを見ていたら、私にでも何とかなるかと思い、今年はあまりハードな山行はしてないのでこの際頑張ってみようと出かけることにした。


 家を AM2:00位に出る、関越道を沼田で降りて、国道120号を上って行くと、遅い観光バスがいてつながってしまう。


 夜中に走る車は、尾瀬が目当てで、鎌田を直進するのは私だけだった。


 峠を上り始めると、狐が道路を横切る、ガードレールの向こうからは鹿がこちらを見ていた。


 日光白根山の登山口となる菅沼の駐車場に着くと、かなりの台数の車が止められている、月は沈んでしまったようで、空は満点の星空だが、漆黒の闇の中、車の室内灯で支度をする、一組の登山者のヘッドライトが登って行くので、私もすぐに後に続いて出発する。


 白根山に登ったのは1997年の6月だから、もう14年の前になる、段差が激しく、岩をよじ登るような登山道だった気がする、右手にストック、左手に懐中電灯、頭にヘッドライトと、装備は万全だが、暗い中を歩くのは殆ど始めての経験だ、段差を登るときに、左手があいてないので、一度よろけて、木の根をつかみ損ねて、転落してしまった。


 幸い、落ちたところに岩があり、段差が少なかったのと、ザックがクッションになって、事なきを得たが、右手を一箇所、左手を二箇所、すりむいてしまった。


 特に左手は血が止まらないので、傷バンで応急手当をする。


 登って行くと、夜が明けてくる、前に登っていた登山者が休んでいた、一人かと思ったら、二人いた、この時間から登り始めるのだから、錫ヶ岳に行くのかと思い、仲間が要ると心強いと思ったら、白根山と、そのまわりの山を登るというので、がっかりしてしまった。


 先の長さを考えると、休んでいる暇は無いので、先を急ぐ、結果としてこれが悪かったようで、オーバーペースによる疲れがでて、帰りのペースが極端に落ちる結果となってしまった。


弥蛇ヶ池 雪が少し残っている

●少し雪が残る

 弥蛇ヶ池に着くと、白根山は雲の中だ、十分に休憩を取ってから五色沼に向かう、周辺には雪が少し残っている、五色沼に下ると、晴れてきて、白根山が見えてくる、避難小屋に向かって登っていくと、オーバーペースがたたったのか足が攣りぎみになる、あせる気持ちを抑えてゆっくりと登る、避難小屋には何名か泊まっている人がいるようだ。


五色沼 避難小屋

●いよいよ錫ヶ岳に向けて

 避難小屋を過ぎて少し行くと、道標が有り、白根山の登山道が右に登っていくが、ここを直進して、いよいよ錫ヶ岳へ向かう。


 広い草原を進む、何となく踏まれているような所を歩いて行くと、砂のたまった窪地がある、右側は白根山、左側は白根隠山で、出口が無い窪地なので湿原か、湖にでも成りそうな地形だ、砂がたまっているということは水が溜まった事もあるのかもしれないが、不思議な場所だ。


白根山登山道の道標を直進 最初の窪地

 先に進むと、一段下がったところにもう一枚の窪地がある。


2枚めの窪地 笹原を鞍部に登る

 窪地の正面が白桧岳になるので、ここに登るわけだが、取り付けそうな所は、白根山との鞍部らしいの、笹原の歩きやすそうな所を登って行き、一休みして、取り付けそうな所を探す。


枝に黄色のテープを発見 ここを直登する

●白桧岳に直登する

 鞍部に向かって登って行くと、枝に黄色のテープが巻かれているのを発見した、ちょうど尾根が延びているところなので、ここから斜面を登ることにする。


 少し雪の残る急斜面を登る、木が育たないのか枯れ木が沢山ある、所々にテープも巻いてある、帰りの事を考えて、雪をかいて足跡を着けておいた。


背後に白根山が大きく見えてくる 笹と石楠花の藪

 振り返ると、白根山が大きく見えてくる、山頂に近ずく笹と石楠花の藪になる、大きな鹿が一匹こちらを見ていたが藪に入っていった。


白桧岳の山頂 錆びた道標

●あまりの遠さにパニックになる

 白桧岳の山頂に上がると、登って来た方向の東側に、白根山、南東に白根隠山があるが、目指す錫ヶ岳が無い、疲れた体に頭はパニックを起こしている、山頂は南側に続いているので、行ってみると西側の木の枝に錫ヶ岳の方向を示す錆びた道標がかろうじて読とれる、あれが錫ヶ岳だ。


 西の方向遥か彼方に目指す錫が岳が見えた、ここまで来るのに大変だったのに、これからあそこまでは到底行けそうに無い、気持ちが萎えていく、ふと時計を見ると、まだ8:23ではないか。


白桧岳から錫が岳

 時間が掛かるから、暗いうちから歩き始めたのだ、まだ時間はタップリある、お昼まで歩いて着かなかったら、引き返そうと、少し冷静に成ってきた頭で考え、笹原の踏み後に一歩を踏み出した。


●気を取り直して

 笹原は深さが膝くらいあって、掻き分けないと地面が全く見えない、笹原の中には、倒木や、段差などが隠れているので下り始めると、つまずいて、転びそうになる、おまけに足も攣りそうになる、笹は降った雪が解けて濡れているので、スパッツを、付けていても、ズボンの膝のところから濡れてきて、靴の中まで水が入ってしまった。


 笹が濡れているときは、カッパの下を履かないと靴の中まで水が入ってしまうのは、”ハイトスさん”のホームページにも書かれていたので、判ってはいたが、カッパを履く時期を逸してしまった。


 笹原ではザックを解く気にも成らないので、白桧岳の山頂でカッパを履くべきだった。


男体山と中禅寺湖 白錫尾根に池塘ある

 笹原を下っていくと、男体山と中禅寺湖が見えてくる、何時までも眺めていたいような光景だ。


 池塘の脇のふみ跡は先に行くと判らなくなってしまう、辺りをよく見ると、尾根の稜線に、県境を示す道標が有り、登山道もそちらに付けられていた、全て経験不足のなせる業、なかなか先に進めない。


 それでも、ルートを探す要領がだんだん判ってきて、靴の中は濡れて気持ち悪いが、順調に歩けるようになる、樹林帯に入ると、苔が美しい、獅子神の森のようだ。


 しばらく休んでないので、休憩することにする、真っ先に、靴を脱いで、靴下を絞る。


さながら獅子神の森の苔? 水場

 休憩後歩き始めると、水場に出た、さらに下ると、北側の展望が開けてくる、先日登った四郎岳と燕巣山も見えてきた。


四郎岳と燕巣山 錫ヶ岳山頂へ向けて最後の登り

●山頂に来れた

 そして錫ヶ岳へ向けて最後の登りが始まる、笹原を掻き分けてひたすら登ると、標識が沢山付けられた山頂に出た。


 思わず、”ヤッター”と声を上げてしまった。


錫ヶ岳山頂 山頂で記念撮影

 山頂は樹林に覆われているが、一部南側が開けていて、ここからも、男体山と中禅寺湖がよく見える。


男体山と中禅寺湖

 お決まりの、写真を撮って、無線は、1200MHzで1局、430MHzで4局、わずかに積もった雪が日の光で溶けて、ぽたぽた落ちる中、食事もそこそこに、去りがたい気持ちを振り切って山頂を後にする。


白根山 白桧岳と白根隠山

●行きはよいよい帰りは・・

 山頂から下って行くと、正面に白根山とこれから戻らなくては成らない白桧岳が見える。


四郎岳と燕巣山、ゴンドラの駅も見える

 水場で休んで、今度は登りが始まる、樹林帯まで来ると、今日始めての登山者が登ってきた、5名ほどの団体さんで、山頂でテント泊のようだ。


 その後単独の登山者が3名、今夜の山頂はちょっと賑やかになりそうだ。


 白桧岳への登りは、長くて辛いのぼりだった、笹原の歩きも成れてきたせいか、ルートを失うことも無く休み休みではあるが、何とか山頂に戻った。


登山者が錫ヶ岳に向けて下っていく 白桧岳の主?

 帰りは出来たら、白根隠山経由で帰ろうかとも思ったが、白桧岳から見る白根隠山の急な登りを見て、すぐにあきらめた。


 山頂で休憩後、直登して来た方へ向かうと、またもや、鹿が現れた、この辺りを縄張りにしているのかもしれない。


登って来た跡を発見 窪地の底へ下りたくない

 枯れ木のある斜面を、白根山方面に下ると、登って来た跡を見つける事が出来た、尾根を下り笹原に出るが、また登り返さないといけない窪地の底まで下る気に成らない、白根山側の斜面を歩くが、所詮ルートの無い斜面なので最後は下まで降りてしまう。


 五色沼から弥陀ヶ池への登りは、本当に辛かった、薄暗くなり登山者のいなくなった登山道を、ひたすら下り、登山口に戻った時はすっかり暗くなってしまった。


やっと登山口に戻る

 経験の無さ、体力の無さを痛感させられた、山歩きであった。


●記録

 駐車場 4:15 -(1:13)- 5:28 夜が明けてくる -(0:20)- 5:48 弥陀ヶ池 5:56 -(0:20)- 6:16 五色沼 -(0:27)- 6:43 避難小屋


 -(0:04)- 6:47 白根山登山道を直進 -(0:10)- 6:57 前の窪地 -(0:19)- 7:16 休憩 7:24 -(0:59)- 8:23 白桧岳山頂 -(0:52)-


 9:15 休憩 9:33 -(0:14)- 9:47 水場 -(0:59)- 10:46 錫ヶ岳山頂 11:39 -(0:44)- 12:23 水場 12:38 -(1:36)- 14:14 白桧岳


 14:17 -(1:01)- 15:18 白根山の登山道へ戻る -(0:15)- 15:33 五色沼 -(0:41)- 16:14 弥陀ヶ池 -(1:21)- 17:35 駐車場