馬蹄縦走残り半分、残雪が多く撤退 2013年6月1日


ここで諦める
蓬峠手前の雪渓、ここで諦め撤退

●馬蹄縦走残り半分

 昨年、谷川連峰の馬蹄縦走路を半分歩くことが出来たので、今年は残りの半分を歩こうと計画していた。


 入梅前の好天の日をねらって歩きたいと思っていたが、今年は6月に入る前に入梅宣言が出てしまった。


 こうなると梅雨の中休みを狙うしかないと思っていたが入梅したばかりだというのに、休日の天気が良さそうだ、この機会を逃すといつまた休日に好天の日が来るかわからないので時期としてはまだちょっと早いが馬蹄縦走残り半分を決行する事にした。


 夜9時過ぎに自宅を出る、途中コンビニで食料を仕入れ、11時過ぎに土合橋手前の駐車場に入ると何時も何台か車が停められていたが今日は誰もいない、エンジンを止めると沢の音だけが聞こえて来る、空を見上げると月もなく満点の星空が広がっている、星の数が多すぎて星座も良くわからないが眺めていると柄杓を下にした明るい北斗七星が輝いていた。


 早速寝袋にもぐり込むがなかなか寝付けないでいると、車が一台、そしてもう一台入ってきた。いつの間にか眠った様で気がつくと4時前であたりは少し明るくなってきた、後から来た車から、ヘッドライトを点けた登山者が、白毛門の登山口の方へ歩いていった。


●新道へ入る

 私も仕度をして出発する、土合橋を渡って新道に入る、谷間の道なので朝日が出てくるのには時間がかかりそうだ、でも天気は良く薄暗い道を歩いて行くと、車が一台停まっている、中の人はまだ寝ているみたいだ、やがて正面に鋭く尖った山が見えてくる。


武能岳? 朝日に染まる岩壁

 去年来た時は新道がどんな所か様子を見るのが第一で辺りの様子を見ながらゆっくり歩いたが、今日はルートも解っているし先が長いので、急いで歩くことにする、やがて左の樹林の上に朝日に染まる谷川岳の大岩壁が見えてくる、白毛門の方から登れば同じ目線の高さに、朝日に照らされる一ノ倉の大岩壁が眺められるのでそちらのルートも魅力があるが、帰りに新道の沢を渡渉するのが困難な場合を考えると、やはりこちらのルートを取らざろう得ない。


一ノ倉の岩壁 芝倉沢

 順調に歩きJRの避難小屋を過ぎる、下って芝倉沢を飛び移るのは水量が多く緊張する、傍らにはイワカガミが咲いている、崩落地の手前で休憩する、崩落地はいかにも危なそうに見えるが、行ってみると足場は意外にしっかりしていた。


イワカガミ 崩落地

 この当たりで一名の登山者が追いついてきた、健脚のようで先を譲るとどんどん先に行ってしまう。


●今年は雪が多い

雪渓を行く登山者 大きく割れている

 湯檜曽川をふさぐ雪渓の上に出る、今年は雪が多いようで雪渓は2段に分かれていて割れ目が大きく口を開けている、ここを飛び越えるのは大変そうだったが、先の方で簡単に登山道に移る事が出来た。


ここを登ってきた

 武能沢は最後の難所で、慎重に石を飛び越えると、この先から道は沢を離れ斜度を増して登山道らしくなって来る。


武能沢 ショウジョウバカマ

 急な登山道を登って行くとガサガサ音がするので動物でもいるのかと思ったら、先行していた登山者が倒木を除けて登って行く音だった。木々の間から展望が開けてきて、東の方に笠ヶ岳と思われるピークが見えてきて、稜線からやっと朝日が射してきた。


●鉄塔からの景色は素晴らしい

やっと朝日が射してくる 送電鉄塔の所から谷川岳と一ノ倉岳

 送電鉄塔の所からの展望は素晴らしい、天気が良いので谷川岳と一ノ倉岳が良く見える、裏へ回るとこれから行こうとしている稜線も見ることが出来た。


目指す稜線 旧道との分岐

 送電鉄塔で休憩後登って行くと、雪渓と倒木が現れて夏道が解らなくなってしまった。


 去年来た時は明瞭な道が有ったし、今日は先行する登山者がいたはずなので、踏み後を探すがあまりはっきりしない、倒木を掻き分け雪渓を登ると道標が倒れていてここが旧道との分岐らしい。記憶を頼りに右の方に行くと、先行していた登山者が戻って来た。


 白樺小屋の先まで行ったが残雪が多くこれ以上は行けないので戻って来たと言う、冬山の装備を全くして来なかったようだ。


 装備は私も同じようなもので、念の為持ってきた軽アイゼンとストックが有るだけだからはたいした違いは無い、表面が柔らかくなった雪では役には立ちそうもない。


 昨年来たときにはこの辺りに雪渓は全く無かったがこの先の急な斜面に残っていて通過するのに緊張した、ここにこれだけ有るということはこの先の急斜面にはもっと沢山の雪渓が残っているのが想像される、行ける所まで行ってみますと言って先を目指すことにした。


●行けるところまで

武能岳

白樺小屋 清水峠との分岐

 登って行くと武能岳思われるピークを正面に見て白樺小屋に出る、清水峠との分岐は迷わず蓬峠方面に行く。


件の登山者が諦めた雪渓 シラネアオイ

 分岐の先には大きな雪渓が残っている、さきの登山者はここで諦めたのだろう、軽アイゼンを付けて雪渓を登るが腐った雪には大して効果が無い、雪渓の上に出ても夏道が何処に通じているのか解らずしばらく見回すと、道はターンして右の奥に向かっていた、木の枝につかまったり悪戦苦闘して何とか登山道に出ると一株のシラネアオイがさいていた。


この雪渓は何とか越えた 斜面がきつく上を目指したが諦める

●撤退

 次の雪渓は幅が広いが斜面がなだらかなので何とか越えられたが、その先の雪渓は斜面が急で行けそうに無い、でも上を見ると幅が狭く斜面も緩そうなので行けるかもしれない、少し休んでから雪渓の淵を登ろうと試みる、少し登ってみるが何歩か踏み出しただけで、疲れてしまい気力は急に萎えて来る。


朝日岳から笠ヶ岳の稜線

 写真を撮って戻る事にする、登って来た雪渓だが帰りは踵を強く蹴りこむと楽に歩くことが出来る、行けなかった清水峠が見えている。


ここで落ちたら止まらない 清水峠

●滑落

 それは突然の事だった、広い雪渓を越えてゆだんしたのか、木の枝が邪魔な斜面を歩いているとき足がすべりいきなり滑落してしまった、アッと思ったときには体はすべり落ち、近くにあった枝をつかんだが枯れた枝で何も出来ず、そして滑落はいきなり止まった、運よく下のブッシュに引っかかった、落ちた距離は10mくらいか。


この斜面を滑落した 滑落した跡

 滑落が止まったところで体は大丈夫か調べたが、特に痛むところは無かった、上を見ると滑った後がついているので写真を撮った、戻るのは右側にしようか左側にしようか迷ったが、右側を登ると滑落したところをまた通らないといけないので左側の斜面を登った。


滑落した斜面

 登山道に戻ってから靴の中にまで入った雪を払ったが、小さな虫が沢山飛んできて、顔の周りにまとわりつき、余計に惨めな気分に成ってしまった。


 止まらなければそのまま逝ってしまうところだった、絶対に避けなければいけないことだ、やはり少し油断があったのかもしれない。止まった事は運が良かったのだと肝に銘じて心のノートにしまっておこう。


芝倉沢に携帯が落ちていた

 送電鉄塔の所で再び休憩する、皮肉な事に天気は素晴らしく青空が広がっている、芝倉沢を渡渉すると黒い携帯が落ちていた、登ったときには無かったはずなので、私の先に歩いていた登山者のか、帰りに湯檜曽川の雪渓の少し上ですれ違った3名の登山者の物かもしれない、このまま置いておこうか迷ったが、登山指導センターに届けることにして落ちていた場所の証拠写真を撮る。


 幽の沢まで下って来ると中学生の団体がぞろぞろと登ってくる、土合の駐車場にはバスが4台停まっていたので200名近くいたのかもしれない、新道から旧道に登るの最後の道を登る、距離は500mくらいだが疲れた体には堪えた、旧道はスキーをする人や観光客、登山者など沢山の人が登ってくる、登山指導センターには指導員の人がいたので携帯を渡すことが出来た。


 6月末か7月、天気の良い日があったら、今度こそ残りの半分の馬蹄縦走実現したいものだ。


●記録

 駐車場を出る 4:04 -(0:49)- 4:53 JR巡視小屋 -(0:28)- 5:21 崩落地手前で休憩 5:27 -(0:07)-5:34 雪渓に乗る


 -(0:23)- 5:57 休憩 6:09 -(0:22)- 6:31 送電鉄塔 6:33 -(0:15)- 6:48 旧道分岐 -(0:11)- 6:59 白樺小屋 -(0:40)-


 7:39 引き返す -(0:28)- 8:07 滑落する -(0:37)- 8:44 白樺小屋 -(0:26)- 9:10 送電鉄塔 9:13 -(1:13)- 10:26 芝倉沢


 -(1:27)- 11:53 駐車場