二子山 は曇っていた

 
二子山(フタゴヤマ)
標高1165m
中里村、小鹿野町
登山日1996年11月 3日
  二子山 西岳山頂で

●二子山から呼ばれる

 以前、稲含山に登ったとき、430MHzでCQを出したところ、藤岡のローカル局が二子山から呼んでくれた事がある、かなりの岩峰だという事であったが、その時以来ぜひ行ってみたいと思っていた。


 11月3日、日曜日朝起きると曇っているが晴れてきそうな雰囲気だったので、行ってみる事にした。


 中里村の漣痕から先には今までに行った事が無い、従って二子山を見るのも初めてである、志賀坂トンネルを越えて少し下った当たりから二子山の山容が見渡せた、民宿”登人”と思われる建物の手前に左に入る林道があり二子山トンネルの工事現場で行き止まりになっている、林道に入って行くと左側に二子山登山口の案内板があり、その先に3台ほどの車が駐車して有った。


 仕度をして登り始める、この当たりからだと樹林に遮られて、二子山を見ることは出来ない。


 登山道は沢筋に付けられていて、せせらぎを聞きながら登って行くが、やがて沢は涸れて、静寂の中を黙々と登ることになる、小鳥が木々の間で戯れている。


 ローソク岩の分岐に着く頃には、樹林の間から、紅葉した山々が見通せるように成ってきた。


 股峠につくと、右に東岳、左に西岳が大きく立ちはだかっている、東岳は悪い岩場があり危険と感じたら引き返した方が良いと「130選」にはあるが、どの位危険なのか確かめてみたいと思い、東岳に向ってみた。


●東岳

 ところが当たり一面落ち葉に覆われていて、踏み後が全く解らない、歩き易そうな所を適当に登って行くと次第に傾斜がきつく成ってくる。


 木や岩などに捕まりながら登ると岩峰の基の所に着いて、此処から先には進めそうも無い、右の方は先で切れ落ちている、左の方を見ると明らかに踏み後が有るので行ってみると、ますます傾斜はきつく成ってくる、3点確保を心がけながら更に登ると古いロープが下がった狭い岩場に出た、ベテランの人と一緒なら行けないことも無いような気もしたが、一人では不安である、この当たりが潮時と納得して、引き返すことにした。


 西岳の姿を写真に撮り、しばらく当たりの展望を楽しんだ、股峠は十字路に成っているが、登って来た先は林道に通じている、こちらから登って来るとすぐ近くまで車で来る事が出来るようだ。


●西岳

 股峠に戻って今度は本命の西岳だ、ところが登山道は昨夜来の雨で湿っていて、すこぶる滑りやすい、ズボンの裾は泥だらけ、手も泥だらけだ、滑り落ちないよう注意しながら登る、登山道には先人の滑った靴跡がたびたび見受けられる。


 登るに連れて、傾斜はきつくなり、岩場に成ってくる、やがて分岐が有るが、案内が無い、左に行くと直登に成っていて危険そうだ、戻って右に行くと先に大きな岩が立ちはだかっている、巻道は無いかと探すが、それらしい踏み跡は無さそうだ、岩は真ん中が割れている、どうやら此処をよじ登って行くよりほかに道は無さそうだ。


 覚悟を決めてザックを降ろし、褌ならぬ、ベルトをゆるめ少しずり下がったズボンを上げ直し、岩場に取り付いた、幸い岩には凸凹があり、手や足は掛かりやすい、なるべく下を見ないようにして岩を越えると、その先にしっかりした道が有った。


 そこから少し登ると右に山頂標識の見える按部に出た、二子山山頂には先客がいる、左にも同じくらいの高さのピークが有るので、まずはそちらに行ってみた。


 此処からの眺めはなかなか素晴らしい、ただ残念な事に雲が多く、両神山は雲の中だ、見えるのは正面に東岳、周りの紅葉した山々と、西、東の御荷鉾山、オドケ山、山肌を削られた叶山くらいだ。


●山頂で無線

 此処で430MHzの物差し八木を木の枝に掛けてワッチしながら、コーヒーを入れて写真を撮ったりQSOしたりで楽しい一時を過ごす事ができた。


 その後、三角点のある山頂に行ってみると、最初に登った所の方が幾分高く見える、二子山の西岳は、西の方角に尾根が通じていて、山頂とは別に赤白のダンダラ棒のあるピークがあって、その先がだんだんと低くなっている。


 夫婦者と思われる先客が居て、「天気が悪くて残念ですね」と言うと、「こんな天気も良いものだと思わないといけない」などと殊勝な事を言われてしまった。


 山の話や山頂標識を入れての記念撮影などをしてから、山頂を後にして、ダンダラ棒のあるピークに向かった、尾根は両側が切れ落ちていて、かなりの高度感がある、此処から下を覗くと南側にローソク岩がありロッククライミングをしている人達もいる。


 山頂西のダンダラ棒のピークで無線を聞いていると、矢ヶ崎山から7N2C** Hさんが出ていたので呼んでみたがパイルに勝てない、何度か呼ぶと誰かが「後で呼ぶ」とかぶせてきた、JQ1H** Oさんの声のような気がしたので、呼び出し周波数に行って呼んでみたが応答が無い、再びC**局の出ていたチャンネルに行くと、今度は旦那さんの7K2O**局が出ていた。


 呼んでみたら今度は取ってもらえた、交信を終わるとJQ1H** Oさんがブレークで入ってきた、サブチャンを移って、先週に続いて今週もOさんとラグチュウしてしまった、聞けばOさんは上野村のマムシ岳にいるという、おまけにJE1K** Aさんと一緒との事で、思いがけずAさんとも交信する事が出来た。


 その後尾根を更に下り鎖を一本下ると杉の林になり、この辺りも非常に滑りやすい、注意深く歩いて行くと送電鉄塔の下に出た、この鉄塔は放電しているのか絶えず不気味な音が聞こえる、此処から二子山が良く見えるはずだが、あいにくガスが巻いていて何も見えない、登山道を更に下ると、赤や黄色の落ち葉に覆われた道になり、今日も無事に楽しい山歩きが出来たことの幸せがこみ上げてきた。


●記録

 登山口 8:30 -(0:29)- 8:59 ローソク岩分岐 -(0:12)- 9:11 股峠 -(0:19)- 9:30 東岳で引き返す -(0:53)- 10:23 西岳隣のピーク


 11:25 -(1:35)- ダンダラ棒のピーク 13:00 -(1:00)- 14:00 登山口


1996年11月 foxtrot