阿能川岳
(アノウガワダケ)
標高1611m
利根郡みなかみ町
登山日2022年 4月10日
 (日)
  阿能川岳

● ここも冬しか行けない

 阿能川岳の事を知ったのは、今は無き栃木県塩谷町にお住まいだった Oさんと朝、通勤の時に交信したからかもしれない。


 Oさんはみなかみ町の烏帽子岳(1621m)に登られていた、どんなところを歩かれていたのか調べたら、谷川連峰より南に位置する山々を縦走されていた、驚くべきことに、川古温泉からスタート、反時計回りにヨシガ沢山から、阿能川岳に登り、小出俣山、や十二社ノ峰など地形図に名前の無い山を含めて10の峰を縦走されていた、しかもこれらの峰々には登山道が無く、冬季限定の山だ。


 私には縁の無い山だと思っていたが、最近では山関係のサイトに情報が上げられていて、そんなのを知るうちに、出来る事なら登ってみたいと思うようになった。


 そんな阿能川岳だが、今年こそはと、天候の良くなるチャンスを伺っていたが、4月10日の日曜日が絶好の山日和になりそうなので、山頂まで行けるか不安はあるが出かける事にする。


 仏岩ポケットパークの駐車場に着くと、すでに5台くらい車が停められていて、準備をする人もいる、登山口の有る南側には、1mくらい雪が残っている、ワカンと、チェーンアイゼンも持ってきたが、藪コギが有るらしいので爪の短い10本爪のアイゼンだけ持っていくことにする。


駐車場から雪の残る植林地に入る 赤谷越に向かう道

 駐車場から先行する人のトレースを頼りに雪の残る暗い植林地に入り登って行く、広い作業道のようなところを行くと道標が有る、稜線を越えると南側の開けた斜面になり、良く踏まれた登山道が続いている。


● 赤谷越

赤谷越は吾妻耶山方面との十字路に成っていて、直進すると
川古温泉に行けるようだ
ヨシガ沢山

 阿能川岳方面は北側の急な斜面で、後から来た登山者が先に登って行く、枯れ葉の積もった道を登って行くと、所々に残雪が有る、やがて雪に覆われたヨシガ沢山に着くが、ここはただの通過点だ、振り返ると樹林越しに台形の吾妻耶山が見える。


道を進むと木に食い込んだ巡視路を示す看板が有る 展望が開ける、三国街道、永井宿あたりか

 この道は鉄塔の巡視路だったらしく、登って行くと西側の開けた展望の良い所を通る、道は右に曲がって登ったところに鉄塔が有る、ここからは尾根が北に延び雪に覆われた緩い登りが続く。


尾根の上にトレースが続く ダケカンバかな、天気は良い

 一人で歩くと不安のせいか、ペースが速くなる、今日は先が長いのでペースが速すぎないよう気を付けて歩くようにする、1230mあたりで休憩、ゼリー飲料でエネルギーを補給する。


藪が出ている 雪の残る広い尾根

 尾根のトレースを辿るが、雪が融けて藪に成っている所がある、事前に調べた最近のレポートに、藪コギをしたと書かれていたのでここの事かと思いながら歩くが、ここは序の口で、先には大変な藪が待っていた。


 広い尾根は、時々藪が出ているが、登りは緩やかで歩き易い、単調な登りが続くと思ったら正面に1mほど高く成ったところに広場が有り、7名ほどの団体の登山者が休んでいた、皆さんヘルメットをかぶり、ピッケルを持った人や、アイゼンを付けた人、中にはスコップをザックに付けている人などいて、いかにも雪山に慣れたベテランの集団のようだ、私はといえば、ヘルメットはおろかピッケルさえ持たず、何か気おくれしてしまう。


 鍋クウシ山という1314mのピークが有るはずなので、スマホのGeographcaで確認すると、鍋クウシ山は気付かずに通過してしまったようだ、団体さんが先に出発したので、私はここで持ってきたアイゼンを付けることにする。


● 藪を登る

大きな雪庇が有る 尾根が狭く正面の藪を登る

 雪は柔らかいが、アイゼンを付けると多少効くような気がする、雪の斜面を登って行くと尾根は狭くなり、完全に藪が出ている、団体さんは登るのが遅くすぐに追いついてしまう、リーダーらしい人が声をかけてくれて、前に出してもらう。


 雪庇が落ちている所や、クラックが入って下が抜けているような雪が有って、多くの人が乗ると心配だ、リーダーの少し開けろと指示が飛ぶ。


 藪に逃げているトレースを良く確認しながら、雪渓に戻る場所を見逃さないように登って行く。


 藪の急登は、急な所や岩場など有って、緊張する、シャクナゲの枝を掴んで注意深く登り何とか突破していく。


団体登山者が後から付いて来る 正面のピークが三岩山らしい

この岩は右を巻く

 岩場を右の雪庇に巻くが、先が急登など有って気が抜けない、正面に目の高さほどの雪の壁が有ると、上からカップルの登山者が下って来た、今日は雪が悪いので撤退すると言う、最近来ているようで、その時はここも雪で埋まっていたらしい。


 私はすぐに登れないので、ちょっとよけて登山者が下るのを待ってから、雪の壁につま先を蹴り込んで何とか体を持ち上げた、帰りの事を考えると、不安が募る。


● 藪をぬける

藪を抜けて雪原に出ると前に登山者がいる

 藪が終わって雪原に出ると、前に登山者が登っている、やがて追いつき話すと、ちょっと前にここに来ていて、その時は天気が悪く撤退したと言う、雪が多くて大変で、今日の方が歩き易いとの事、この人たちつぼ足で登っている、ピッケルも持たないが、歩くのは速そうだ、人によって雪山歩きの感じ方はずいぶん違うようだ。


 やがて正面に大きく谷川岳が見えて、三岩山の山頂に着く、谷川岳の肩の広場は真っ白な雪が美しく、双耳峰ですぐにそれと解る、撮った写真を拡大してみると登山者が登っているのも確認できた、左に見えるのは一ノ倉岳らしい。


正面に谷川岳

● 三岩山

目指す阿能川岳山頂がやっと見えた 脇のブッシュに付けられた三岩山のプレート

 三岩山はほぼ雪に覆われていて西側にわずかに覗くブッシュに三岩山、1568mと書かれた小さなプレートが付けられていた。


三岩山の次のピークに登山者が休む、正面の岩山は爼嵓、
左が川棚の頭かな
山頂目指してゆっくり登る

 派手なウエアの旦那さんと良くしゃべる奥さんらしいカップルは先が見えて元気になったと出発し、私は少し休んでから後に続く、登って行くとワカンを付けた若いカップルの登山者が下って来た、先のピークで休んでいた人らい。


 この先に藪が無いか聞こうと話すと、この人たちは昨日からテント泊で川古温泉から小出俣山、阿能川岳を縦走して来たとの事だった、気になる藪は無いそうで、後は安心して登れそうだ。


 その後、単独の登山者が下って来た、聞けば、朝4:00くらいに川古温泉を出発して小出俣山から阿能川岳を縦走して来たという大変な健脚の人だった。


 後は大展望の雪原を登るだけなので、写真を撮りながらゆっくり登って行くと、藪で追い越した団体さんが登って来て、追い越して行く、山頂が見えたのでペースが上がり速い人はどんどん登って行くようだ。


● 阿能川岳山頂

団体さんが追い越して行く 谷川岳をバックに記念撮影、隣に先に登られた方

 雪原の広い阿能川岳山頂は10名あまりの登山者で賑やかになる、団体さんは埼玉県から来られたようだ、記念写真のシャッターを押してあげると、私も撮っていただいた。


山頂手前の大きな雪庇  左から吾妻耶山と三岩山、遠く子持山と小野子山、中ノ岳、
 十二ヶ岳

左から小出俣山、仙ノ倉山からの主稜線、手前に爼嵓山稜

爼嵓山を撮ったら、山頂の標識が写っていた ストックにアンテナをセットするが

 地図を広げ山座同定した後、私はちょっと離れた所にストックを立てアンテナをセットしたが、ここで大きな失敗に気が付く、書くものが無い、何時も持ってくるボールペンを忘れてしまったようだ、ザックのポケットを探しても出て来ない。


 以前にもペンを忘れた事が有るので、何時もザックのポケットに一本入れておくのだが、長い間使わないとインクが固まって書けなくなってしまうので、出してしまったようだ。


 日曜日、快晴無風のコンディションで、ここまで来て無線がボーズでは泣くに泣けない、最後の手段、無線機の録音をオンにしてCQを出すと、入間市の局が応答してくれて何とか一局交信出来た。


 カップルの登山者は前橋から来られたようで、旦那さんは以前無線をしていたが今は閉局したようだが、奥さんは従免を取って今は局免を申請中とのことで、私のアンテナや、ザックに付けた無線機を見て感心されていた、それではとコールサインの入った名刺を渡しておいた。


 カップ麺とパンで昼食を摂り、書くものさえ有れば、何局も交信で来たのに残念でならないが、皆さんが先に出発し、最後に山頂を後にする、時間が経てば経つほど雪が悪くなりそうなので、早く下山する方が良いのは明らかだ。


上州武尊山良く見ると獅子ヶ鼻山も確認できる 水上町を俯瞰する

 下って行くと3名ほどの登山者が登って来る、流石にこの後は誰も登って来なかった。


三峰山と関越道 岩の上に成長するタフな木、右側を通る

両側が切れた藪 シャクナゲの藪

 心配した雪の段差の下りを注意深く降りる、思ったほど大変では無かった。


笹の藪 大きな雪庇

 登りでアイゼンを付けた広場まで下ったので、ここでアイゼンを外す、アイゼンが無いと軽くて歩き易い、でも滑るので踵を蹴りこむように歩くが、一度下りでしりもちをつき少し滑落する、幸い木の枝に足が掛かり事なきを得る、油断は禁物だ。


鍋クウシ山の山名板 先のピークを越えればすぐに鉄塔だ

 登りで気づかなかった鍋クウシ山の山名板が木に付けてある、スカイさんの付けた山名板みたいだが、GPSで確認すると、地形図の1314mより少し上の方にある、ここはどう見ても只の斜面でピークで無い、鍋クウシとは何だろう。


 鍋クウシ沢というのが近くに有るがちょっと離れている。


鉄塔の下で休憩して、赤谷越に向かう 仏岩

 今日は非常に暖かく、下って行くと夏のような熱気を感じる、赤谷越に着くが、こちらから吾妻耶山に登る事はまず無いだろうと思い、仏岩を見ておこうと吾妻耶山方面に登ると、カップルの登山者が下って来る。


 仏岩について聞くとすぐそこだと言う、今日の阿能川岳の話などして、仏岩に向かうと本当にすぐだった。


 仏岩はかなり大きく南側がえぐれていハングしている、写真を撮って、登山口のポケットパークに戻った。


 登れるかどうか心配だった、阿能川岳、書くものを忘れるという大失敗をしてしまったが、何とか無事登ってこれた、来年は小出俣山かななんて思いながら帰路に就いた。


● 記録


 駐車場 6:03 -(0:31)- 6:34 赤谷越 6:41 -(0:25)- 7:06 ヨシガ沢山 -(0:11)- 7:17 鉄塔 -(0:17)- 7:34 1230mで休憩 7:39


 -(0:43)- 8:22 1377mで休憩 8:29 -(1:14)- 9:43 三岩山 9:56 -(0:32)- 10:28 阿能川岳山頂 11:12 -(0:28)- 11:40 三岩山


 -(1:05)- 12:45 1377mで休憩 12:52 -(0:08)- 13:00 鍋クウシ山 -(0:36)- 13:36 鉄塔 13:43 -(0:31)- 14:14 赤谷越


 -(0:13)- 14:27 仏岩 -(0:24)- 14:51 駐車場


カシミール3Dで作る、登り赤、下り青

2022年 4月 foxtrot