霧と強風の日光白根山

 
白根山(シラネサン)
標高2578m
片品村、日光市
登山日1997年 6月 7日
  日光白根山山頂

●是非とも登りたかった

 群馬県に住んでいる私にとって、県内最高峰である、日光白根山(2577.6m)は是非とも登ってみたいと前々から思っていた。


 天気予報によると、7日の土曜日は晴れ、8日の日曜日は晴れ後曇りとの事なので、梅雨に入る前の最後のチャンスを逃してはなるまいと、7日急遽出かけることにした。


 日光白根山は100名山の一つでもあり非常に登山者が多いので、早め早めの行動が良いとのOMさんの助言により、家を4時出発、6時登山開始、9時半山頂、11時まで無線運用と皮算用していたが、もろもろ準備で遅れ、4時半ころ出発、登山口は6時半くらいになってしまった。


 途中片品村に入ると道路工事も手伝って、朝6時くらいだというのに、渋滞には成らないものの連続して進行する状態である、鎌田の橋の所まで来ると私を除いて全ての車が左折していった、尾瀬はさぞかし賑やかだろうと思われた。


 日光白根山菅沼登山口は、キャンプ場の看板があり、大きな店とロープの張られた広い駐車場の隣で、広い林道は両側に駐車出来るように成っているが、既に右側はほぼ満車状態であった、空いている所に車を止めてすぐに出発する。


 林道分岐の大きな案内板で確認して登山道に向かう、やがて樹林帯に入る、登山道は多くの登山者に踏まれたせいか大きくえぐられた急登で、段差が激しい。


 岩角や木の根に捕まり体を持ち上げるようなところもある、石楠花の木が有るが、花はまだまだ先のようである。


 登山道は樹林帯の為展望は全く利かず、所々に雪渓が残り、ぬかるんで滑り安い、登り初めから曇っていた天候が気に掛かる、ガスが出てきたようだ、一時間ほど登った所で小休止して、少し歩くと、「弥陀ヶ池」が見えてきた、こんな事なら休まず歩くんだったと後悔する。


 「弥陀ヶ池」のまわりは、登山道にロープの張られた木の柵が張りめぐらされていて山の斜面が「シラネアオイ」の咲く所らしいが、花らしい花は全く見られない、昨夜「NiftyのFYAMATRK」で「日光白根のシラネアオイはまだ」というのを読んでいたので予想はしていたが、やはり花はまだ先のようでちょっとがっかりである。


●360°ガス

 花はともかく天候が良くない、360゜ガスで展望は全く利かない、「弥陀ヶ池」からは日光白根山の山頂が見えるはずであるが、方向すら解らない、案内板が有るのでそれに従って、山頂を目指す。


 大きな雪渓を越えて急登を登ると風も出てきた、それと供に何かぱらぱら落ちてくる前後して登っていた登山者が「ヒョウが降って来たですね」と言うが、形が変である、ちょうど霜柱のかけらのような細長い氷の粒が落ちてくる、登るにつれて解ったが、木の枝に着いた霧氷が風にあおられて飛んできたようだ、一瞬キリが晴れると、霧氷の着いた見事な景色が現れる、思わず写真を撮ってしまった。


霧氷の登山道

 それにしても寒い持ってきたトレーナーを着込む、やがてガレ場の急登に変わる、赤土で、これでは「白根山」でなくて「赤岩」だ。


 体力の消耗が激しい10歩登っては息を整えまた登るという状態だ、前に二人の登山者がいるので後に続いて登っているが、両側に大きな岩が門のように立ちはだかる所を右に登り岩場をよじ登る、かなり切れ落ちているようであるが、ガスで何も見えないので怖さは感じない。


 霧氷を取って口に入れると疲れた体に心地よい。

●日光白根山山頂

日光白根山山頂

 岩場を一つ越えると一旦下り、さらにもう一つの岩場を登ると、そこが山頂であった、山頂は岩が折り重なった狭い場所で山頂標識があるが、三角点が見あたらない、若い登山者が三角点の上でソーセージを焼いて祝杯をあげているようである。


 展望は360゜ガスで何も見えない、山頂標識の前で写真を撮って、ちょっと下った岩影にザックを降ろす、寒い!とにかく寒い!トレーナーの上にゴアの合羽を着込むが、それでも寒い、近くに居た人に聞くと、5度だそうであるが、風が有るので体感温度はもっと低い。


 インスタントコーヒーを入れるが熱いはずのお湯がちっとも熱く感じない、標高2578mでは430MHzは全く空きがない、1200MHzをセットしてCQを出すとすぐに応答が有り鹿沼市、鹿島郡、東村山市と3局交信した、寒さで手がかじかんでメモもままならない。


 体の中から暖めれば良いと思い、カップ麺を作るが、これもちっとも熱くない、そうこうしていると、一瞬ガスが晴れて、中禅寺湖と、男体山の一部が見えてきた、近くに居る人達と「ワァオー待った甲斐があった」歓声を上げて、思わずシャッターを押した。


 キリが晴れたのもほんの一瞬で辺りはまたガスに覆われた、だが雲の流れは速く天候は確実に良い方に向かっているようである。


奥白根神社

 山頂は狭く新たに登山者も来るようなので、奥白根神社の方に下ることにした、神社で登山の安全を祈願して辺りを散策する、この辺りは高原状の大地で広くて大変FBな場所である、山頂との間には大きな雪渓が横たわっている。


山頂は岩場の高まり

 此処から見ると山頂は単なる岩場の高まりに過ぎない、100m程下ると危険の標識が有るので覗いて見ると、なるほど、沢筋が崩落していて、足下はオーバーハング状態である。


●再び無線運用

 反対側草付きの斜面にザックを降ろして再び1200MHzでQRVを決め込む、天候も回復してきて時折ガスが晴れて男体山、女峰山、中禅寺湖などが見える、正面に見えるのが錫ヶ岳、その遠くに見えるのが皇海山のようだ、小鳥がすぐ近くで囀っている、展望を楽しみながら珍しく横浜市、藤沢市、大宮市など13局も交信してしまった。


 呼べばいくらでも応答が有りそうだが、11時になるのでQRT、避難小屋方面に下る踏み後が解りずらい所もあったが、下るのにつれてはっきりしてくる、多くの登山者が登って来るがこちらもかなりの急登だ、困ったことに左足の関節が痛くなってくる、日頃の運動不足と登りで無理をしすぎたようだ、足をかばいながらゆっくりと下る。


五色沼

 赤い屋根の避難小屋を過ぎると「五色沼」はすぐだ、途中何度か雪渓を越えるが、踏み抜かないよう注意して歩く。


 「五色沼」で大休止、見上げると晴れ渡った大空に白根山山頂が素晴らしい。


 「五色沼」から急登に文句を言いつつ「弥陀ヶ池」に登る、「弥陀ヶ池」からも山頂が良く見える、霧氷はすっかり溶けたようだ、よくあの岩場を登ったものだと感心しつつ帰路につく、100名山の一つ「日光白根山」やはり100名山に恥じない素晴らしい山だ、今度は花の咲く時期にまた来てみたいと思った。


●記録

 登山口 6:27 -(1:03)- 7:30 小休止 7:35 -(0:11)- 7:46 弥陀ヶ池 -(0:50)- 8:36 白根山山頂 9:28 - 無線運用 11:10 -(0:32)-


 11:42 五色沼 12:03 -(0:28)- 12:31 弥陀ヶ池 -(1:23)- 13:54 登山口


1997年 6月 foxtrot